人間万歳! セーヌ川にて [Paris]

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自分はどうも特徴ある人物を見かけると放っておけないたちらしい。
その人物とは、パリのセーヌ川を1時間かけて巡る遊覧船に乗ったときに遭遇した。

そのお方は中国系とおぼしきおばちゃん。
遊覧船が動き出し、左にグラン・パレが見えてきたなと思ったその時、いきなり
立ち上がりヌッとカメラを構えると写真を撮り始めた。
おばちゃんの年代にしてはなかなかの装備のカメラを構えるその姿に心打たれた。
仁王立ちで、まるで双眼鏡でも覗いているような独特なスタイル。その構えたレンズ
から今にも熱光線が発射されそうだ。

そこからは恐ろしいほどの真剣さが伝わってくる。
実際、おばちゃんの視界の邪魔になっていたとおぼしき罪もない観光客がおばちゃんに
怒鳴られていた。ありゃりゃ。そこは完全におばちゃんの支配区域だった。

世の中には、当人が真剣なほどどこかユーモアが漂ってしまうシーンというのがある。
周りの人間は状況を分かっているが、その人には見えておらず自分の世界で突っ走って
しまう。そのギャップが周りの人間には面白く感じられてしまうのだ。
しかし、どちらがその対象に対して純粋で情熱的かと言えば、突っ走ってるお方だろう。
そして得てしてそういうお方が世に残る仕事を成し遂げる。
普通の人は世間を気にかけ、ほどほどで止めにする。そして周りを感動させることもなく
真剣な人間を笑うことにいそしむ。そう、あのドン・キホーテの物語のように。
いやこの我輩のように。

おばちゃんのお陰でパリの名だたる名所をことごとく見逃した。
でも多いに楽しんだよ。
ユーアーチャンピオン オバチャン !!

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