パリは音がいっぱい [Paris]

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カルチェラタンにて

パリの魅力のひとつに、音楽が身近にあることがあげられる。
ライブハウスやバー以外に、地下鉄の通路、路地、公園など人の集まるところなら
どこででも音に遭遇する。それも、日本のストリートミュージシャンのようにちっぽけな
失恋の痛手を似通った声色で必死に歌うような子供っぽいものでなく、ジャズや
クラシック、アカペラ、はたまた民族楽器まで大人でも楽しめる本格派なものが多い。

町に音楽があると、活気が生まれる。それはまた寛いだ雰囲気を町にもたらす。
それはパリの魅力の一部になり、驚異的な年間旅行者数2800万(パリだけで)に寄与して
いるのだろう。 (*因みに現在の日本全体の年間旅行者数は900万人にも満たない) 
これだけの旅行者が世界中から来るとすればそれだけ投げ銭も集まるだろうから仕事と
して十分成り立つということも街頭ミュージシャンが多い一因かもしれない。

そういえば、ストリートミュージシャンと言えば、今回の旅で忘れられないアーティストに出会った。

ある日地下鉄に乗っていたとき、60歳程の痩せたおばさんが乗り込んできた。どう見ても
普通のおばさんのそのお方は、片手に黒い小型の箱のようなものを抱え、それをドンと
足元に置くと、何やらごそごそし始めた。するとノリノリのラテンの曲が突然黒い箱から鳴り出した。
だが、どうやら曲を間違えたらしく、慌ててリモコンをいじくると一転してムーディーな“べサメ・
ムーチョ”に切り替わった。

おばさんは軽く咳払いをすると、遠慮がちにあたりを見回し少し恥ずかしそうにCDに合わせて
歌いだした。
『べサメ~ ベ~サ~メ ム~チョ~♪』
その歌は申し訳ないが、例えるなら40年ぶりに行われた同窓会の二次会のカラオケで
無理やりマイクを持たされ久しぶりに歌うおばちゃんの歌のようだった。
オーラの全く出ていないどちらかといえば幸薄そうな、しかも歌がまったく素人くさいおばちゃんが、
大衆の面前でそういうことをするということに、先ずは衝撃を受けた。

歌は続く。

『コモ~シフエラ~ラノーチェ~ラウルティマ~べ~ス~♪』
見ると、おばちゃんの前に座っている女子二人組は笑いをこらえるのに必死で肩が揺れている。
その向かいの男性は絶対におばちゃんと目を合わすまいと必死な形相だ。

僕はその光景がシュール過ぎて、おばちゃんには悪いけれどおかしさをかみ殺さんとするばかりに
顎がはずれそうだった。やがて目的の駅に着いて僕と連れは電車を降りたが、あのおばちゃん
は投げ銭を獲得出来たのか気になってしょうがなかった。

パリに行くとこれまでの人生で出会ったことのない音に出会える。
さすがは多様性の町。そして懐が深い。鬼のように深い。

この日、人に感動や衝撃を与えるのは“上手”ばかりじゃないことを教わった気がした。

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コメント 2

ilprimo

パリの大きさが伝わって来ますね、さすがヨーロッパの中心地。様々な魂が宿ってそうですね。ますますのレポートお願いします。
by ilprimo (2013-07-13 08:45) 

suave

ilprimoさん
ええ。パリは役者が多いですね。そして大人が頑張ってますね。
by suave (2013-07-15 19:44) 

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